ガイド 開業
中古車販売業の開業に必要な許可・登録・帳簿・書類|実務の順に整理
中古車販売業を個人で開業するときに必要な古物商許可、自動車リサイクル法の引取業登録、オートオークションの入会条件、開業初日から義務になる帳簿(古物台帳・消費税の帳簿)、登録に使う書類を、準備する順に解説します。
この記事の要点
- 古物商許可(品目「自動車」)が前提。申請は営業所の管轄警察署、手数料19,000円、審査は40日前後
- 古物台帳と消費税の帳簿は1台目の仕入れから義務。後から遡って作ることはできない
- 店が作れるのは自店が申請人・譲渡人になる書類だけ。買主の申請書は行政書士法の対象(2026年1月改正)
中古車販売業は、車を仕入れて売るまでの間に複数の法律が関わります。本記事では、個人で開業する場合に必要な許可・登録・帳簿・書類を、実際に準備する順番で整理します。
古物商許可
中古車の売買は古物営業法上の古物営業に当たるため、営業所を管轄する警察署に古物商許可を申請します。手数料は19,000円、標準処理期間は40日前後で、取り扱う品目は「自動車」で申請します。個人事業の場合、申請者本人が管理者を兼ねることができます。
必要書類は住民票、本籍地の市区町村が発行する身分証明書、誓約書、略歴書などで、行政書士に依頼せずに申請できます。自動車の品目は盗難車が混入しやすいため、他の品目に比べて前歴や経験の確認が細かい傾向があります。
自動車リサイクル法の引取業登録
使用済自動車(廃車にする車)を引き取る場合は、都道府県知事の引取業登録が必要です(自動車リサイクル法42条)。手数料は数千円、標準処理期間は2〜6週間です。
販売用の車だけを扱う予定でも、下取りで走行できない車を引き取る場面は早い段階で発生します。開業と同時に登録しておくと、自動車リサイクルシステム(JARS)の事業者登録も行え、リサイクル券の照会が可能になります。
オートオークションの入会
仕入れの主要な経路です。USS、TAA、JUなどの会場は古物商許可の保有を前提とし、入会金・保証金・年会費に加えて「古物商許可の取得から1年以上」「常設の展示場または事務所」といった条件を設けている会場があります。
開業直後は入会できない会場もあるため、初期の仕入れは業者間取引(業販)やJU会員経由で行う事業者が多く見られます。会場で落札した車の古物台帳の記載方法は、中古車の古物台帳の書き方で解説しています。
開業初日から義務になる帳簿
見落とされやすい項目です。1台目を仕入れた日から、次の2つの帳簿が必要になります。
| 帳簿 | 根拠 | 要件 |
|---|---|---|
| 古物台帳 | 古物営業法16条 | 受け取ったとき・引き渡したときにその都度記載。自動車は1万円未満でも記載義務がある。最終記載日から3年保存。様式は別記様式第15号。電磁的記録も可だが営業所で直ちに印刷できること |
| 消費税の帳簿・請求書の写し | 消費税法30条・57条の4 | 課税事業者は適格請求書(インボイス)を交付し、写しを7年保存。個人からの仕入れは相手がインボイスを交付できないため、古物商特例(帳簿のみで仕入税額控除)を適用する |
古物商特例は「古物商であること」「棚卸資産として買い受けること」が要件のため、古物商許可がここでも効いてきます。免税事業者として開業する場合でも、買主が事業者(業販)であればインボイスの発行可否を確認されます。適格請求書発行事業者の登録は、開業前に税理士と相談して決めておくことを推奨します。詳細は中古車販売のインボイスを参照してください。
登録に使用する書類
仕入れた車を自店名義に登録する場合と、販売した車の名義を変更する場合で使用する書類は次のとおりです。
| 場面 | 自店が作成する書類 | 相手から受け取る書類 |
|---|---|---|
| 仕入れ | 譲渡証明書・委任状の様式(車両欄を記入して渡し、相手に署名・押印してもらう) | 前所有者の譲渡証明書、委任状、印鑑証明書(3か月以内)、車検証 |
| 自店名義での登録 | 保管場所証明申請書2通、自認書または使用承諾証明書、所在図・配置図 | 他人の土地の場合は所有者の承諾 |
| 販売 | 自店が譲渡人の譲渡証明書、自店が委任者の委任状(受任者欄は空欄で渡せる) | — |
2026年1月に施行された改正行政書士法により、店が買主の申請書(買主の車庫証明、買主の委任状、移転登録の申請書)を報酬を得て作成することは、名目を問わず違反であることが条文上明確になりました。店が作成できるのは、自店が申請人または譲渡人になる書類に限られます。線引きは改正行政書士法で中古車販売店ができること・できないことで解説しています。
開業時点では不要なもの
- 販売管理システム。最初の10台程度までは必要ありません。ただし古物台帳と請求書の写しは1台目から義務のため、表計算ソフトで管理する場合は「削除されない・修正の履歴が残る」形にしておく必要があります
- ヤフオク・メルカリとの自動連携。事業者向けのAPIはどのサービスも提供していません(ヤフオクはストア契約者のみ、メルカリShopsは自動車本体の出品禁止)。出品文を作成して貼り付ける運用が現実的です
- 行政書士との顧問契約。自店の車の登録は自店で行えます。買主の書類を扱う場面が生じた時点で依頼すれば足ります
価格の決め方と広告表示
販売価格は「原価÷(1−粗利率)」で算出し、低価格帯の車では最低粗利を下回らないようにする方法が実務に適しています。広告に表示する価格は2023年10月から支払総額(車両価格+諸費用)が義務です。詳細は中古車の支払総額表示と価格の決め方を参照してください。
まとめ
- 古物商許可(品目「自動車」)を取得し、必要に応じて引取業登録を行う
- 古物台帳と消費税の帳簿は1台目の仕入れから記載する
- 登録書類は自店が申請人・譲渡人になるものだけを作成し、買主の書類は買主本人または行政書士が作成する
- 広告は支払総額で表示する
出典: 古物営業法(e-Gov) / インボイス制度 Q&A 問87・106・110(国税庁) / 行政書士法(e-Gov) / 中古車の販売価格の表示が「支払総額」に変わりました(自動車公正取引協議会)
本記事は一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言・税務助言ではありません。法令・様式・手数料は変わることがあります。提出先の案内で確認のうえ、個別の書類作成は行政書士、税務の判断は税理士にご相談ください。