ガイド 消費税・インボイス

中古車販売のインボイス対応|請求書・領収書・仕入明細書の記載事項と古物商特例

適格請求書の6つの記載事項、消費税の端数処理は1枚につき1回、未経過の自動車税・自賠責保険料相当額は課税でリサイクル預託金相当額は非課税、個人からの仕入れに適用する古物商特例と仕入明細書、業者オークションの精算書、領収書の印紙税、写しの保存期間7年について、国税庁の資料に基づいて解説します。

この記事の要点

  • 未経過の自動車税・自賠責相当額は区分表示しても課税。リサイクル預託金相当額は非課税
  • 個人・免税事業者からの仕入れは古物商特例で帳簿のみ保存。棚卸資産として買い受けることが要件
  • 業者オークションは会場の精算書がインボイス(媒介者交付特例)。仕入明細書は不要

中古車の売買では、1枚の請求書の中に課税・非課税・不課税の行が混在します。また、個人から買い受ける場合は相手がインボイスを交付できません。本記事では、国税庁の資料に基づいて中古車販売業のインボイス対応を整理します。税務上の判断は最終的に税理士に確認してください。

販売時の請求書・領収書

適格請求書発行事業者は、適格請求書を交付します。記載事項は次の6つです(消費税法57条の4第1項)。

  1. 発行者の氏名または名称と登録番号(T+13桁)
  2. 取引年月日
  3. 取引の内容
  4. 税率ごとに区分した合計額(税抜または税込)と適用税率
  5. 税率ごとの消費税額等
  6. 交付を受ける者の氏名または名称

自動車は買主が特定されているため6を記載します(不特定多数に販売する小売業などは6を省いた適格簡易請求書も可)。消費税の端数処理は1枚につき税率ごとに1回で、行ごとに端数処理した額を合計する方法は認められません。

免税事業者は登録番号のない請求書を交付します。ただし買主が課税事業者(業販)の場合、買主側の仕入税額控除に経過措置(控除できる割合が段階的に縮小。2026年10月から次の段階)が適用されるため、業販の比率が高い場合は登録の要否を開業前に検討する必要があります。

出典: No.6497 適格請求書等保存方式(国税庁)

中古車販売の各行の税区分

国税庁の質疑応答事例「中古車販売における未経過自動車税等の取扱い」に基づく整理です。

項目 区分 理由
車両本体 課税 —
未経過の自動車税相当額 課税 区分表示しても車両代金の一部とみなされる
未経過の自賠責保険料相当額 課税 同上
リサイクル預託金相当額 非課税 金銭債権の譲渡。売上ではなく預託金の回収
登録・車庫証明などの行政手数料の実費 立替(不課税) 領収書の名義が買主の場合。自店名義の場合は課税売上に含める
登録手続・納車の費用として上乗せする額 課税 役務の対価

仕入れ側も同じ考え方です。リサイクル預託金は非課税で記録して原価に含め(前所有者に預託金相当額を支払って引き継ぐ)、税金は不課税、自賠責保険料は非課税、検査・登録の手数料は非課税、ナンバープレート代と封印取付料は課税となります。

出典: 中古車販売における未経過自動車税等の取扱い(国税庁 質疑応答事例)

個人からの仕入れは古物商特例

個人や免税事業者から買い受けた車は、相手がインボイスを交付できません。この場合に適用するのが古物商特例です(消費税法施行令49条1項1号ハ(1))。古物営業の許可を受けた古物商が、適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産として古物を買い受ける場合、帳簿の保存のみで全額の仕入税額控除ができます。

  • 帳簿(総勘定元帳など)に古物商特例に該当する旨を記載する
  • 相手方の住所は、古物台帳に記載があれば帳簿側では省略できる(古物台帳の保存は古物営業法で3年、消費税の帳簿は7年)
  • 自家用車として買い受ける場合は棚卸資産ではないため対象外

相手が課税事業者で請求書を交付しない場合は、仕入明細書(消費税法30条9項3号)を自店で作成し、相手の確認を受ける方法があります。記載事項は作成者(自店)、相手の氏名または名称と相手の登録番号、その他は請求書と同じです。「一定期間内に連絡がなければ確認したものとする」旨を記載して交付する方法が認められています(インボイスQ&A問87)。

業者オークションで落札した場合

会場が出品店に代わってインボイス(精算書)を交付する媒介者交付特例(インボイスQ&A問48)の対象です。会場の精算書を保存すれば足り、仕入明細書は不要です。出品店が免税事業者の場合は精算書にその旨が記載され、経過措置の対象になります。

反対に、個人の車を預かって代理出品する場合、会場の精算書は「出品店=売主」として交付されます。委託のまま処理すると消費税の整理が複雑になるため、オークション出品が前提であれば、いったん買い受けてから販売する(古物商特例で控除し、落札額を自店の課税売上とする)形が整合的です。古物台帳上の扱いは中古車の古物台帳の書き方を参照してください。

領収書の印紙税

紙で交付する領収書は、記載金額5万円以上で収入印紙の貼付が必要です(印紙税法 別表第一17号の1)。100万円以下200円、200万円以下400円、300万円以下600円、500万円以下1,000円、1,000万円以下2,000円です。消費税額を区分して記載している場合は税抜の額で判定します(印紙税法基本通達24条)。PDFなどの電磁的記録で交付する場合は課税文書に該当せず、印紙は不要です。

保存と番号

交付した請求書・仕入明細書の写しは7年間保存します(消費税法57条の4第6項)。番号の付け方に法令上の定めはありませんが、写しと控えの照合のため「種類・年ごとの連番」にしておくと管理が容易です。電子帳簿保存法の検索要件(取引年月日・金額・取引先で検索できること)は、一覧をその3項目で並べられれば満たしやすくなります。

まとめ

  • 適格請求書の記載事項は6つ。消費税の端数処理は1枚に1回
  • 未経過税・自賠責相当額は課税、リサイクル預託金相当額は非課税、実費の立替は不課税
  • 個人からの仕入れは古物商特例、業者からは請求書か仕入明細書、オークションは会場の精算書
  • 紙の領収書は税抜5万円以上で印紙。PDFは不要。写しは7年保存

出典: インボイス制度 Q&A 問48・87・106・110(国税庁) / 消費税法(e-Gov) / 印紙税法(e-Gov)

本記事は一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言・税務助言ではありません。法令・様式・手数料は変わることがあります。提出先の案内で確認のうえ、個別の書類作成は行政書士、税務の判断は税理士にご相談ください。